みんな決して意地悪ではないし、悪気もないのである。
ただ気づかないだけ、あるいは「ちょっとの間だからいいや」、「誰も使わないだろう」おそらくそんな軽い気持ちで車を止める。
しかしここははっきり『身障者用』と書かれた駐車スペースなのである。
今日も、この悪気のない人々をたくさん見かけた。公共の建物入り口付近の身障者用駐車スペース。置くわ、置くわ。 業者さんらしき2トントラック。バタンとドアを閉め、軽快に歩いていくワゴン車の男性。小さな子ども連れの女性。
私は日々、こういう風景を見る。そして「あーあ、またか」とため息をつく。あの広さがないと乗り降りできない人、入り口からの距離が短くなければ困る人。そんな人たちのための駐車スペースが十分生かされていない。
知り合いのカナダ人は私に「なぜ日本人はあそこに車を止めるのだ。まったく理解できん。」と驚いた表情で言う。
「なぜって、私にもわからんよ」
「カナダでは許可証を持たない車が止めたら200ドルほどの罰金をとられる。たとえそれがあなた(つまり車椅子使用者)であっても、許可証を提示し忘れて止めれば罰金だよ。たった2、3分で200ドルさ」
なるほど。飲酒運転が罰則の強化で激減したように、身障者用駐車スペースの問題も罰則強化に頼らなければならないのかも知れない。“モラルの問題だから”“マナーを守って”といったレベルで話をしていても、日本人はこの問題を解決できないような気がする。
まず
「ここへは止めてはいけないのだ」という意識をはっきり持ってもらう。そのほうが近道かもしれないなと思う。なんだか
情けないことだけれど。
相手のことを思いやり、正義や礼儀を重んじる。かつて海外の人から賞賛を受けるほどの
高い道徳観を持っていた日本人はどこへ行ったのだろう…ね。